『少年は戦場へ旅立った』
ゲイリー・ポールセン

うごかす書庫へ

血を流す戦争も、心を傷つけ、壊す戦争も根本は同じ。
「傷つけ、損じ、壊すことの、
本当の痛みを理解していないこと」
全てを理解することなど、誰にも不可能。
でもそれを承知で踏み出す一歩に、
奇跡は宿るはず。


どれだけ自分の正義を語ろうとも、
そこにどんな理想があったとしても、
人と人が肉体を損じあう行為、
つまり戦争とは結局、
美しいものでも、
カッコいいものでもなく、
粘つく血液、傷口からとびだした内蔵、
ばらばらの手足、人肉に蠢く虫、
崩れ落ちた建物、泣き叫ぶ子供、
焦げ臭い火薬、人間の肉の焼ける臭い...
行き着く先は、
見るにも、聞くにも、書くにも耐えないもの。

また血こそ流れないまでも、
傷つけられた心が、また別の心を傷つける、
「心の戦争」に明け暮れている小さな島国もあります。

「痛み」と目を合わせることは難しい。
全てを理解することなど、きっと誰にもできない。
でも、それを百も承知で踏み出す一歩が、
変化へと繋がるのかも知れません。

この本は実話をもとにした児童文学に属しますが、
らしからぬ、濃い「戦場の匂い」を漂わせる作品として、
注目を浴びました。
この本を読み聞かせると、興味のなかった子供たちが、
黙り込み、聞き入ると話題にもなりました。

１５歳で年齢を偽り入隊し、戦場に立った少年が、
戦闘を重ねるごとに、
心をどう変化させていったのか？
そして結果、少年はどのような人生を歩んだのか？
残念ながら、明るい結末などまっていません。
痛い、痛い、悲しすぎる話です。
深く、深く、心に刻み、
その心の裂け目に新しい芽を生み出していくために、
どうか目を背けずに向き合って頂きたい本です。




本の状態　★★★☆☆　3.0点　
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