『おもかげ復元師』
笹原 留似子

うごかす書庫へ

今、あなたに命があることは、
当たり前などではなく奇跡。 あなたの大切な人の命が明日あることは、
この世界で一番の奇跡。
どうか今すぐ、
あなたの大切な人をもう一度確かめて下さい。


しずかに耳を澄ませ
何かが近づいてきはしないか
見きわめなければならないものは目の前に
えり分けなければならないものは
手の中にある
午前八時一五分は
毎朝やってくる

一九四五年八月六日の朝
一瞬にして死んだ二五万人の人すべて
いま在る
あなたの如く 私の如く
やすらかに 美しく 油断していた。
この詩は石垣りんさんの詩の抜粋です。

あなたの如く　私の如く
やすらかに　美しく　油断していた

この詩は原爆によせて書かれたものですが、
大きな問いを私たちに投げかけます。
「油断していませんか」
「明日が当たり前のように来ると思っていませんか？」
もし私たちの命が、生と死のおぼろげな狭間にあるとするならば、
見きわめなければならないものは目の前に、
えり分けなければならないものは手の中にあります。
いくら「なぜ？」と問いかけても、
ある日、ある時、場合によってはなんの前ぶれもなく、
人は、死にます。
命のぬくもりとは、それほどに儚いもの。
だからこそ、いとおしくて、いとおしくて、いとおしいもの。

どうか今すぐ、
あなたの大切な人をもう一度確かめて下さい。
それより大切なことがあるというなら、
それは一体なんですか？？？


おもかげ復元師...
故人を見送る現場で、故人を生前の表情にできうるかぎりお戻しし、
お体を清め、棺にお納めする。
ご家族に見守って頂くのではなく、
ご要望を聞きながら、一緒に納棺を行う「参加型納棺」を行う。

東日本大震災でのご活動が報道され、
震災関連本として扱っていた書店が多かったこの本ですが、
とりあげられている事例の大部分は、
「何気ない日常で起こっている死」と
それにまつわる家族・友人たちのエピソードです。

死にまつわる最も辛いこととは、
伝えたかった言葉や想いが、あてもなく宙ぶらりんになってしまうこと。

笹原さんの活動は、たとえ擬似的だとしても、
送る者の想いの届け先をつくること。
「参加型」にこだわっておられる点もその証明であると私は思います。
この本で、何度でも「命」について考えて頂けたら何より幸いです。

本の状態　★★★★☆　4.0点　
（状態の目安　★５点...最美品　★４点...美品　
★３点...普通　★2点...状態悪し　★１点...破れあり）　

帯　　　　　　　　　　あり
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